第72回 授業研究会 1999年7月17日(土) 佃中学校


第72回英語授業研究会は、1学期末の7月17日(土)に佃中学校で行われました。今回の参加者は30名。遠く山口県からの参加者もあって、熱心な研究会になりました。


冒頭、長先生から研究会の方針についての提言がありました。
「この研究会は、授業者が授業を検証する視点をきちんと説明して、その視点にそって全員で検討できる会にしよう。そこから、授業を見る目が養われていき、改善の視点も生まれてくる。How toや小手先の指導技術に終始したり、何となく授業を見て、思いつきで協議していくような研究会から脱却していこう。」

この提言を受けて、この日の提案者である三浦先生から「授業検討の視点」についてまず発言がありました。(資料)
この日の参加者の誰もが感じたことだと思いますが、三浦先生の真摯な指導姿勢に圧倒される雰囲気の中、ビデオを使った授業研究、詳細な解説と会場からの質疑、コメントと続きました。


山口県から参加の福井貴己先生。「我々に、課題を共有してともに解決していこうと呼びかけながら、授業の成立過程を説明してくれる三浦先生の姿勢に感動しました。」

当日使用した資料:三浦邦彦先生発表資料(まとめ)指導案と授業で使用した資料
(ともにアクロバット形式のファイルです。)

参加者レポート(研究会の記録)
 今回より、参加者のレポートを紹介していきます。二人の方に、当日参加しての感想を含めて、研究会の記録をまとめてもらいました。

(1)丸山篤広先生(太田区立羽田中学校)

 夏休み直前の7月17日(土)、第72回英語授業研究会が行われました。
「中英研研究部の授業を検証する(1)」のテーマのもと、今回は東京大学教育学部中・高等学校の 三浦 邦彦 先生 が5年前に公立中学校でされた研究授業を、ご本人の詳しい解説とともにビデオで振り返る、という内容でした。
 発表の前半、今回の授業を見る視点として、三浦先生よりいくつかのポイントをお話しいただきました。
 中でも"授業へのアプローチ"に関する解説は、日頃私たちがつい忘れてしまいがちな部分を思い出させてくれる内容でした。「"どんな生徒を期待するか"、という問いに対しては、我々教員は期待する生徒像についていくらも話せた。ところが、"では、どんな教師が望まれるか"という問いになると、たちまち歯切れが悪くなった」という、三浦先生の英国留学時代に学ばれた話には"教育に国境はない"とあらためて実感させられました。
 また、"別な視点からの授業へのアプローチ"では、研究部で先生が長年研究された生徒分析が発表されました。"授業を行うにあたって根底にあるもの"は何か。それを我々は一教師としてどう分析し、子どもたちに還元していくべきなのか。先生の膨大できめ細かな生徒分析の意義がよく伝わってきました。
 発表後半には、先生が現在取り組まれているテーマの一つでもあるStudent Talk 分析にも話がおよび、"functionを意識してのTeacher Talk の使用によるStudent Talkの変化分析をしていく"という研究の目的が、あらためてよくわかりました。
 今回の三浦先生の授業を拝見するのは2回目となりました。初めて先生の授業を見させて頂いたのは、私がまだ学生の頃、教育実習を終えて自分が教員になれるかどうかもわからないという時でした。当時、授業で使用される英語の量の多さに圧倒され「どうすれば公立の中学校でこのような授業ができるのか?」と抱いていたすっきりしない疑問が、今回の三浦先生ご本人の解説を聞き、霧がすっと晴れていく思いがしました。また、そのときにはわからなかったのですが、個々の活動がそれぞれ大きな意味や目的のもとに綿密に構成されていたことも分かり、目の覚める思いでした。
 日頃の先生の弛まぬご努力、研究に対する熱意もさることながら、三浦先生の生徒一人一人に対するあたたかな眼差しと励ましは、彼らの未来を見据えられているからこそあるものだ、そう感じさせずにはいられない授業解説でした。
 あらためて、三浦先生に感謝いたします。


(2)田中久美子先生(板橋区立第4中学校)

今回の講演は、1994年に三浦先生が研究部の発表で行われた授業のビデオを使って実施されました。講演は大きく分けて次のような内容で進みました。
☆ 授業の視点について三浦先生より
☆ 資料の説明
☆ イギリス留学のこと
☆ ビデオを使っての発表
☆ 現在の授業
あらゆる場面に先生の心くばりが感じられる、愛情あふれる授業であるとともに先の先まできちんと考えられている内容を拝見し、たいへん勉強になりました。用意していただいた資料もとても参考になりますが、先生が発表してくださったことで特に印象的なものを紹介させていただきます。

☆ 授業の視点について
  研究授業というと声のよく出るクラスや元気なクラスを選びたくなりますが、三浦先生はあえて一番やりにくいクラスを選んで授業をなさったそうです。
理由は、研究授業を通して生徒にきっかけを作ってあげたかったから。

☆ 資料の説明
  1〜5ページ  授業案
  6〜8ページ  学習者に望むこと、英語の先生に望むことなど
  9ページ    三浦先生の授業へのアプローチについて
  10ページ   現在進めている研究について
  11ページ   4月から現在までに行ってきたこと(中1)
  12〜13ページ 語いと英語教育第18集より
  14〜19ページ 分析

☆ イギリス留学のこと
講演の途中で、三浦先生がイギリス留学中に学ばれたことや質問されたことなどのお話がありました。
例えば、
  Q: ディクテーションは生徒にとってストレスが多いのではないか?
  A: 既習の内容から出題している。
  意見: 授業の最初に「今日は〜をやる」ということを伝えた方が良いの
     ではないか、など。
日本の中学生と同じような条件のクラス(90分)をイギリスで見学した時、先生の発話より生徒の発話のほうが断然多かったとのお話がありました。12〜13ページの中で今まで少なかった部分を意識して授業を進めていくようにしたら、生徒の発話量が先生の発話量よりずっと多くなったとのことです。
また、ペアワーク中は、きちんとモニターをすることが大切だというお話もありました。全部は無理かもしれませんが、ねらい目をつけて、内容やイントネーションをチェックし、出来ていない部分を全体に戻すなどすると生徒の活動が次へとつながってくるので。

☆ ビデオを使っての発表
・ インタビュー活動を行うときなど、いきなりやるのではなく、最初は先生と、次にとなりの人と協力して練習、最後に全体でという手順をふんで行っている。
・ プリントを配るときなど、生徒になるべく多くの英語を使わせるために、一枚わざと少なく配り、取りに来させるなどの工夫をいれている。
・ 1つの授業が終わったらそれがスタート地点。次の授業からも習った文型を復習として授業に入れている。
・ 板書計画もきちんと行った。
・ cut out picturesを上手に使うために公開授業当日は黒板に鉛筆でうすく印をつけた。
・ 授業で必要と思われる単語を前もって手作りのBINGOで導入している。
・ 長先生に前もって授業案、計画、予想される発話(先生、生徒)をすべて書き出して渡した。
などの工夫やお話もうかがいました。

☆ 現在の授業
4月から現在までに4回のスキットを実施。ビデオで生徒の様子を見せていただきました。最初のころに比べ、生徒の表情もジェスチャーもかなりのスピードで変化している状況がわかりました。また、基礎英語を毎時間取り入れ、現在では2/3の生徒が家で聴いているそうです。
ライティングマラソンとして、既習文型を使って文を書くように指導されており、多い生徒で500個、少ない生徒でもすでに100個の文を書いているとうかがいました。
定期的にアンケートや個別のインタビューを行い、生徒の変化を追っているとのお話もありました。

継続的に生徒の様子を観察・分析され、発達段階に応じて的確な指導を積み上げていらっしゃる様子がよくわかると同時に三浦先生の生徒にたいする熱意と愛情を感じました。先生のもとで一生懸命活動を行っている生徒のみなさんのこれからがとても楽しみです。1学期の経過のビデオでもその著しい成長過程が見えるのですから、これからどれだけ伸びていくのか目にうつるようでした。
公開授業のビデオは今回で3回拝見させていただきましたが、今回の講演はその中でも最も三浦先生の授業に対する思いいれや準備の様子がとてもわかる発表でたいへん感動いたしました。
もっと丁寧に授業の組み立てをしていこうというエネルギーをいただいた気がします。
三浦先生、ありがとうございました。

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