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 第137回授業研究会

 ビデオによる授業研究 [29]

 2010年5月8日(土) 東京都立両国高等学校附属中学校
 

第137回英語授業研究会は、準備していた指導案がちょうどなくなる30名の参加者を迎えて行われました。授業は、原田博子先生(江東区立深川第一中学校)のこの2月に行った研究授業を使いました。原田先生は、東京都中英研研究部や全英連などでも活躍されていますし、昨年からは東京都の教師道場の助言者もつとめられています。今回の授業もその研修会の中で、模範授業としてこの2月に公開されたものです。

今日は、当日の協議の中からいくつか話題になったことを整理しておこうと思います。我々の授業改善の視点として重要と思われることがいくつも含まれているからです。

・Teacher Talk
 教師道場の模範授業という設定もあって、今回の指導案は非常にていねいに作られている。特に、当日の先生の発話する英語のスクリプトがTeacher Talkとして用意されているということには注目したい。原田先生の授業はよくコントロールされた内容と展開で、生徒の学習の流れを妨げずに自然に流れるような印象を与えてくれる。しかもそのほとんどが英語による授業だ。これは、その準備としてTeacher Talkそのものがきちんと用意されていることがとても大きい。英語で授業を行うと言うことはよく話題にされるが、英語で話しさえすればいいというわけではなく、そこで使われる英語には十分な検討がなされていなければならない。ということは、あまり語られていない。考えてみると、日本語で行う授業であっても、発話の整理や発問の検討は必要である。思いつきでも話せる母語の日本語なら授業のコントロールは簡単かといえば、必ずしもそうでないことは明らかだ。Teacher Talkについては、日本語部分も含めて、授業準備の一つのポイントであることを忘れてはならない。

・warm-upとしてのcasual conversationの大切さ
 2年生の2月であっても、Did you ---? / What did you ---?など基本的な文型を使い続けることは重要である。定着には時間がかかる。意味を充分に理解して、自然な情報のやりとりを短い時間でも体験させることは有効である。

・Speech
  生徒の発表の好きな本を紹介するスピーチを、順番に毎回行わせている。スピーチも一方通行にならないように聴衆との英語によるinteractionも盛り込まれている。どの生徒も年間で3回ぐらいは必ず回ってくる。その準備も指導に組み込んでいるので、発表そのものは非常にスムーズに行われていて、授業の展開を妨げない。このような発表や表現活動は、現在の評価体制では不可欠であるし、授業の中での様々な指導の成果がよく見える場面でもある。計画的に実施すべき学習である。

・教科書の内容を発表するOral Presentation
 これも生徒の重要な発表活動である。授業の中でのOral Introductionや音読練習などの流れの中に位置づけられるものである。生徒にとっては、テキストの内容をしっかりと理解すること、その英語を自分の発表の中で使えるようになるまで練習することなど、比較的高いレベルでの取り組みがが要求される。だから、長期間の計画の中で繰り返し指導していくことで、ハードルを下げて、スモールステップを刻んでいく必要がある。これも先のスピーチまでの指導の一つとして重要だ。単に教科書の英文、特に会話文をそのまま暗記するだけでは、運用力はつかない。自分の言葉で表現させることを目標としたい。これまでに習った表現が自然に出てくることを期待する場面である。

・音読の指導
 手順をきちんと押さえることが大切だ。「フラッシュカードで語句の練習」「教師のモデルを聞かせる」「全体での練習」から「個々の練習」などのステップは外すことができない。内容の理解も日本語を使ってしっかり押さえたい。気をつけるべきことは、日本語に訳せば理解できたと単純にはいかないことで、何をもって「理解できる」と考えるかは工夫すべき点だ。理解の点検と深化の段階では、答えが一つだけではないことにも留意したい。

・学習習慣の必要性
 英語の習得には学習の習慣が不可欠である。家庭学習は一人で行われなければ効果がない。そのためには、一人で練習できるような指導を学校でしておくことが大切だ。まずは、一人でも音読できるようにしておくこと。そして自分の使える英語を増やして、自分なりの言葉で表現ができること。そのための練習が重要である。そう考えると、「関心・意欲・態度」の指導は、学習指導全体の根幹である。指導と評価を考える時に、「表現」や「知識」の観点に比べると、後回しにされたり、無視されたり、機械的なアプローチのみで処理されがちだが、それでよいかという議論も大切である。


原田先生の授業は、これまでにない研究協議を生み出してくれました。ここで気のついた視点からの授業の見直しは、新学期2ヶ月目の授業を再点検するのにきわめて重要なことだと思います。それは、若手、ベテランの区別なく、共有すべき作業です。(文責:杉本@両国附属中学校)


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