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 第127回授業研究会

 ビデオによる授業研究 [20]    

 2008年9月 27日(土) 午後2時   
 
東京都立両国高等学校附属中学校
 

第127回英語授業研究会は、会場を両国に戻して、すでに3年目に入っている「ビデオによる授業研究会」を再開しました。突然秋風を感じるようになった中で20名以上の参加者を迎えて、活発な議論が繰り広げられました。

授業を提供してくれた前田宏美先生(西東京市立田無第四中学校)は、東京都教師道場での研修も終了しています。今回の授業はその時に収録した授業で、前任校である西東京市立柳沢中学校の2年生、2月のものです。ご自身が意識している授業改善の課題として次のような言葉がありました。「授業をするなかで、4技能のうち「話すこと」の指導がもっとも弱いと感じています。授業については、まだまだ改善点が多いのに見えなくなり始めているのが現状です。ご指導よろしくお願いします。」

授業を見始めて参加者がびっくりしたのは、生徒の声の大きさです。「話すことの指導」の難しさの一つである「間違いを恐れず、はっきりと発話する」という点は非常によくできていて、前田先生と生徒の信頼関係の確かさを感じさせています。実は、前田先生の発話のボリュームも非常に大きく、生徒は自然にこの重要な資質を身に付けてきたんだろうと思います。普通に教室の後方から撮影したビデオでしたが、最初はマイクの設定に何か工夫があるのかと思ってほどでしたから。

それでは、研究協議の中からいくつか論点をあげておきます。

・あいさつに続くsmall talkでは、直前に行われた校外学習に話題を求めて、普通の授業では耳にできない語いの紹介なども工夫されいた。よいアイデア。例:sumo wrestler

[dictation test]
・復習内容で、この研究会でもおなじみになったlast sentence dictationの手法を用いて行われていた。この学習は非常に重要で、できるだけ毎時間行うべきだ。(会場で挙手を求めたところ参加者の約半数は毎時間実施している。)
・ただしこの授業で行っていたのは、前時(直前の学習)のページからの出題で、やや難しかったようだ。文型の練習という意味での「復習」ならばこういうやり方もいいが、このdictationには扱う英文そのものよりも、教師の発話(音読)を生徒が集中して聴き取ること、言わばshadowingの前段階の指導としての学習効果がある。この点を中心に考えると、扱う英文そのものは可能な限り平易で易しいものがよい。前学年の教科書を使った取り組みにはこういう意味がある。毎時間の指導として繰り返していくなら、この点に留意した計画が必要だ。今回のような内容なら、新しい学習内容の導入直前に、文型に焦点を当てた形で行った方がよかったかも知れない。

[Teacher Talkについて]
・前田先生自身が自分の課題にあげていたが、全体的に最初の投げかけはきちんと英語で行われていて素晴らしい。生徒もよく聞いている。ただ、生徒とのやりとりが深まったり、生徒の反応が遅かったり、分からないような表情が出てくると日本語が出てきてしまう。これはかなり難しいことだが、事前の準備と生徒の理解を信じること、もう少し長く間をとることなど改善の方法はあるだろう。意識して、実践を積むべき課題だと思う。
・生徒とのやりとり、interactionを深める、単発のQ-Aで終わらせないという点では次のようなことも工夫できるだろう。
・先生から生徒へ問いかける時に、いきなり特定の生徒を指名することが多いが、全体に投げかけておいてから個々の生徒に答えさせる方が、指名されなかった生徒にとっての学習量は増えるだろう。
・いきなりWhat ---?の質問をする前に、Yes - Noで答えられる質問をくり返す。周辺から次第に焦点に向かってzooming inしていくように英語使用の機会を増やしていく。
・生徒にインタビューの結果を発表させる時も、How about you?のように、発表者自身の言葉を引き出す。また、発表された内容が正しかったか、インタビューを受けた生徒にも確認する。など、教室の中でT-S1だけの会話に、T-S2やS1-S2などのパターンを巻き込んで行くことができると活発な雰囲気が生まれる。
・三人称単数現在の-sのような学習は、説明やドリルだけでなく、日頃から教室の会話の中で繰り返していかなければ定着は難しい。工夫していきたいところだ。

[インタビューについて]
・インタビューの目的にコミュニケーションの必要性を感じさせる仕掛けがあるか。長先生の実践例として紹介されたのは、「あなたも政治記者」-「あの先生の(教育実習生の)昨日の行動を暴け」というような投げかけから、徹底的にインタビューさせる方法。
・教科書にあるようなクラス毎の傾向の調査としてまとめる。
・事前にリサーチしておき、「英語が好きで、理科が苦手な3名の生徒」を探させる。
・インタビューは多くの場合、インタビューする側とそれを受ける側を同じ生徒がどんどん変わりながら一緒になって行われる。思い切ってインタビューするグループと、それを受けて答えるグループとを分けて、インタビューチームは2分間ひたすら聞き続ける、答える側は答え続ける、後に役割を交代という方法もある。可能なら、チーム毎の質問を変えることもできる。
・インタビューのようなspeak outさせる活動の前の口頭練習は必ず必要だろう。
・言えるようになった言葉は、かけるようにするという意味で、writingの学習場面が用意されていたのは重要である。コミュニケーション・タイムと呼ばれていた文型や質問を指定してのchat - dialogue練習でも、この順を意識したパターンが望ましいのではないか。

・長先生から全体を通じて「この授業をさらにgrade upさせるために」
・例えば、3つほど用意されていたwarm upはそれぞれが何を意識してのwarm upなのかという視点からの見直しと整理を。位置づけとしてすべてが必ずしも最初にやらなければならないものではない。「何をする」ためのwarm upか、という視点でprocedureを構成するべき。そこに教師の意図が見えてくる。意識した実践の中で確認していくことが有効だ。


学校行事の多い時期でもあるし、いろいろな地区で土曜日の活用が叫ばれている中、何人参加者が集まるかなと思っていましたが、茨城県、埼玉県を含め、22名。それも教師道場や中英研研究部、ELECや語研などで忙しく活動されいる先生方も多数参加していただきました。これは間違いなく「前田先生効果」です。一所懸命頑張っている先生の姿勢に、いつの間にか感化されていく。少しぐらい忙しくても、足を運んでしまう。まるで、あのビデオの生徒たちと一緒ですね。前田先生ありがとうございました。(文責:杉本)

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