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第121回授業研究会

2007年9月22日(土) 午後2時から

会場は、東陽中学校

テーマ 「授業を見直そう」 ビデオによる授業研究(15)

第121回研究は会場を東陽中学校に戻して、佐々木孝紀先生(江東区立深川第7中学校)の授業研究を行いました。秋の学校行事のためか参加者は少なめの7名。期待していた江東区内の参加が少なく残念でした。次回の11月も区内の先生の授業を用意しています。同じ教科書で同じ進度で共有できる課題に一緒に取り組んでいきましょう。

さて佐々木先生の自己紹介は次のようなものでした。
『深川第七中学校の佐々木孝紀(ささきこうき)と申します。七中に来て2年目になります。初任は、伊豆諸島最南端の青ヶ島という島でした。そこでは、2年間勤務しました。人口200人、周囲6qの大変小さな島で、中学生も6人しかいませんでした。当時は、1年生2人、2年生3人、3年生1人、うち女の子は2年生に1人という構成でした。そのような環境の中で、初任からの2年間をすごした私は、いろいろな意味で異色かと思います。昨年度、現在の七中に転任したときは、通常の規模にもかかわらず、ずいぶん人数が多いなと思ったのを覚えています。さすがに今では慣れました。
  青ヶ島にいた時は、ペアワークやゲーム等、どのようなやり方でやればよいかをよく悩んでいました。(人数の関係で…)その時に、「では、なぜこの活動が必要なのか。」ということや「どんな活動に置き換えて、同じ学習ができるか。」など考えたことが、多少なりとも、現在の糧になっているのかなと思います。
  さて、現任校の七中ですが、各学年2クラスで1クラスが平均30名の比較的小規模な落ち着いた学校です。現在は、2年生の担任をしています。教科では、2年生と3年生を週3時間ずつ、そして1年生のALTとのT.T.クラスを週に1時間ずつ担当しています。また、七中では少人数授業やT.T.クラスを実施しており、昨年度は1学年において、単純2分割の少人数クラスで授業をおこないました。本年度は2学年において、T.T.での授業をおこなっています。講師は昨年から、大学院生の梅田講師にお願いをしています。ビデオは、この2学年のT.T.クラスの授業風景を紹介したいと思います。
  使用教科書はCOLUMBUS(光村図書)です。今回はUNIT4 "Meeting aStranger"の指導を取り上げました。夏休み明けで、まだまだ本調子でないというのが、本当のところです。日頃、T.T.で授業をおこなう場合、どのような方法が生徒にとって、より効果的を考えています。また、導入は絵などを用い、楽しく元気に出来たかな?と思う反面、教科書の音読練習になると、途端に静かになり、なかなか工夫をしても読んでくれないという課題があります。これらの点を当日は、特に見ていただき、ご意見、アイディア等伺えればと思います。
  最後に。短期目標はよく見え、授業案や計画も立てながらすすめていますが、3年間を見通した指導ができれば…というのが究極の課題です。1度習得した語を定期的に復習、活用し定着を図ること、また、3年間というスパンで1つの文法の定着を図ること、などです。ぜひとも、当日は多くの先生方のご意見が聞ければと思います。よろしくお願いします。』


公開された授業は2年生、つい2週間ほど前に週撮影したばかりのビデオです。生徒の声が充分出ていないという先生の抱えている課題はビデオを通してもよく分かりました。最近の生徒によくある「集中力の欠如」「自信のなさ」そして、「音読ができない」という非常に大きく、それだけに何とかしていかなければならない課題です。授業を見学しながら話題に上がった論点をいくつか紹介します。

授業はBingoで始まります。佐々木先生のやり方は6〜7巡目まで、静かに単語を聞かせて、その後でまとめてBingoを確認するという方法でした。生徒もしっかり取り組んでおり、授業の開始にふさわしい学習でした。ここで、長先生から開発時のねらいと基本的なやり方の説明がありました。Bingoについては、多くのバリエーションがあって、授業の中でのねらいも多様です。しかし、当初ははっきりと焦点化されたねらいのももとに開発されています。生徒の状況や「基本をもとにして、バリエーションを広げる」という姿勢が重要です。言いかえれば、「原点に立ち返る」勇気を持つ必要があるということですね。これはBingoだけの話ではないと思います。長く続けることだけに、シンプルで軽快に実施できる方法を考えることが大切ですね。

この授業は日本人の講師とのTeamTeachingでした。2人の先生の役割の確認も重要な視点です。

続けて前時の学習内容の復習、それをもとにした「たてよこドリル」の学習と続きます。
ここでは、復習の考え方に話が集まりました。「前時の復習」は当然ですが、もっと前に学習したことの復習は授業の中で可能かという視点です。具体的な手法としては、前学年の教科書を使ったDictation Testや、前時だけでなくもう少し前の文型を使ったドリルなどです。これは、本当の意味での定着をねらった既習事項の復習で、BingoのようにWarmUpのroutineとして、毎時間少しずつ進めるやり方があります。僕自身の経験からの実感でも、後で話題に出てくる音読指導などはこういった言わば「絶え間のない復習」が重要ではないかと思います。

また、復習は新しい内容のOral Introductionにも通じるところで、生徒の楽しみたいという発想をリードしてInteractiveにその内容に近づけていくことが取り上げられました。周辺や関連の情報、本文に書かれていない行間を読み取って別の言葉で補うなどの方法です。これは場合によっては「日本語で意味を確認する」場面でも有効です。いわゆる直訳で満足しない日本語らしい言葉で内容を伝えることは結構難しい作業です。翻訳に近くなるわけですから。それだけに面白いところではありますね。特にここで使われている教科書Columbus21ではこの視点が有効かと思われます。

たてよこドリルはならべかえのページに当たったこともあって、生徒は少しもてあましていたようです。この教材は市販されている形式のままでは使いにくいページがありますね。思い切った取捨選択や補充が必要だと思います。

さて、佐々木先生自身が一番危機感を持っているのが音読指導でした。ビデオで見る限り生徒の声は小さく不安げです。時間の関係から2時間に分断されていた音読指導を再構成して、短い時間でも必要なステップを確実にふまえていく指導が提案されました。ステップの基本は、CDや先生の発音によるListening、FlashCardによる語句の確認、CDや先生の後についてのRepeating(コーラス)、Buz Reading、ペアやグループでの音読練習、個別の確認などです。復習の場合は短い時間と少ない回数で、新しいページは生徒の状況応じてどこかにじっくりと時間をかけて、同じユニットを読んでいるときは最初のページから必ず始めるなど、とにかく練習機会を増やすことです。

少人数だった分、話は尽きず、教科書のキャラクターの扱い方や使用場面によるFlashCardの使い方の違い、電子黒板の活用などいろいろなことが話題になりました。指導の難しさを受けとめながら頑張っている先生達と授業改善について話し合うことは本当に勇気づけられます。特に同じ区内で同じような生徒を相手にしている先生の悩みには重みがあります。僕は、30年ほど前にあったはずの「初心」を4年目の佐々木先生にもう一度教わりました。(文責:杉本 薫@東陽中学校)

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