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第116回授業研究会

2006年11月18日(土) 午後2時から

会場は、江東区立東陽中学校。

テーマ 「授業を見直そう」 ビデオによる授業研究(11)


第116回の研究会の授業者は岸 由季先生(町田市立山崎中学校)です。岸先生の自己紹介です。

  「東京都町田市山崎中学校の岸です。杉並で新規採用されてから早くも9年目になりました。今は一年生を担当しています。今年から山崎中学校では少人数制を取り入れています。
 今回の授業は9月の初めに校内の研究授業を行なったときのものです。レッスンのまとめをペア学習とスキットを通して行ないました。
 一年生は基礎的な部分でできるようになってほしいことがいくつもあります。3年生になったときに何ができるようになったらいいのかを考えて一年生の指導をするように心がけてはいますが、なかなか思うようにいかないこともあります。全員が教科書をしっかり音読できること、英語を聞いたり話したりすることに積極的に取り組めること、授業の規律を作ることを一年生では中心に授業をしています。今の課題は少人数授業の取り組み方です。多くの人の意見やアドバイスをいただければ嬉しいと思います。よろしくお願いします。」

参加者は13名。このところ連続して中英研研究部の女性の先生に授業提供していただいているので、研究部からの参加も多く、お互いにいい刺激になったと思います。研究部の女性の先生方は、みんな授業中実にパワフルで、頼もしい限りです。

さて、ビデオによる授業研究の方法は、主に2つのアプローチがあります。一つは、授業の内容をステージごとに区切って、それぞれの活動に焦点を当てながらコメントし合うもの。ほとんどの場合このアプローチで、「より効果的な授業」や「授業の改善」に迫ります。もう一つは、授業の中から時間をかけて話し合うべきテーマを抜き出して、授業の展開そのものから少し離れて話を進めるいきかたです。例えば、「音読の段階的な指導のあり方」のような内容です。こういうアプローチになると当日提供された授業そのものは話のきっかけでしか無く、参加者の実戦や経験を持ち合って話を進めることになります。もちろん適宜、長先生からの指導が入ります。この2つのアプローチのどちらを中心に進めるか、ということについては普通は、始めの方法「モデルとなった授業の展開を元に、いくつかの視点を混在させながら最終的に授業全体を考えること」が中心です。そして必要に応じて、そこに発生した話題にサブテーマ的に時間を取って迫ります。これをやりすぎると時間がかかってしまうので、授業の最後まで見切れないこともありました。

今回の研究会では、後半に「指導と評価」の関係について議論が深まりました。このところこの研究会は、授業展開を中心に進めてきているので、もう一つの重要な視点である「絶対評価を授業改善の切り口に」というこの会ならではの迫り方で時間が取れたのは非常に良かったと思います。率直に疑問点をぶつけてくれた参加者のみなさんに感謝します。実はこれはかなり勇気のいることなんです。

まず授業の展開場面からの協議についていくつか紹介します。

・生徒の声が一年生にしては小さい。一方先生の指導の声ははっきりしていて、安定感がある。
・日にちや曜日の確認など毎日繰り返される基本的なやりとりもていねいに時間をかけている。
・Reviewは直前の内容ばかりでなく、どちらかというとwarm up的な意味合いで全レッスンあたりの、生徒が自信を持って音読できるところにも目を向けてはどうか。声の大きさにも影響があるかも知れない。
・少人数制、それもかなり込み入った組み合わせ方を計画的にやっているので、同じ先生の指導を長期間続けられないという面は授業者には扱いづらい面がある。
・英語の歌は、本当に歌わせるとすると段階的な指導が必要だろう。雰囲気作りや英語への接近を促す意味では、必ずしも全部歌える必要はない。
・音読指導にペアリーディングを取り入れて変化を持たせているのは効果的だ。
・2分間での音読回数を競わせる手法は、やりすぎると英語の音調が失われる。モデルとなる速さをきちんと提示する段階も考えたい。
・スキットは初めての時は時間がかかるのはやむを得ない。しかし、段階を追って無理なく取り組めるようにすることも重要だ。最終的に表現活動まで持っていくなら、さらにその段階はスモールステップを用意するべきだろう。例えばRead & Look upや, 立って読むなど。オリジナルのスクリプトにすることも、選択肢を用意するぐらいのレベルから初めてもいいのではないか。

次に、後半の話題になった「指導と評価」についてのコメントです。

・指導案の「本時の展開」の中の「評価の観点」という項目は多すぎる。これは、指導の留意点や重点を示しているのであって、評価を行う部分ではない。多くの場合、教師は「指導機会」をていねいに検討するあまり、評価の場面に取り違えてしまう。「指導と評価の一体」という考え方は重要だが、それは「評価」から見た「指導」の一貫性を問う言葉で、「指導」する場面の全てを「評価」しなければいけないという意味ではない。ある意味で、教師がかなり大胆に自分の指導をとらえ直すことになる。だから多くの場合、「捨てきれない」悩みを抱える。
・純粋に授業内の評価場面を考えれば、可能なのは、1時間の授業で1,2カ所、多くて3カ所ぐらいではないか。
・スキットを例に挙げると、「表現の能力」として評価するためには、8時間程度のallotmentではまかないきれない。活動のゴール場面にあたる「評価場面」はもう少し時間をかけて指導した後になるだろう。指導案上は、「後日」としか言えなくても仕方ない。定期テストで評価する場合も全て「後日扱い」だ。そこへいたるまでの途中の段階、例えば「毎時間、数名ずつ前に出て発表する体験を積ませる」ような学習は、「関心・意欲・態度」の観点から評価することができる。
・単元の目標を整理して、それぞれの評価場面を想定する。定期テストなのか、授業中の小テストなのか、実技テストなのか、作品提出なのか、授業中の観察なのか、いろいろ考えられるが、授業を検討する段階で確認しておきたい。それが「単元の評価計画」になる。本時については、展開の中でどの場面でそれが行われるかを明示すればいい。
・評価計画の中の評価規準は必ずしも「本課」だけのものではない。学期や年間を通じて継続してみていく規準もある。そういうものは、それなりに長期間のスパンの計画がなければならないので、この課の中で評価にrたるスケジュールを全て提示する必要はない。


これを機会に、さらに議論を深めていきたいと、切に感じました。1時間の授業を取り上げながら、指導と評価の全体像へも話が深まっていくというのは、この会の醍醐味かと、勝手に思いこんでいます。みなさん、ぜひ授業の提供をお願いします。

全英連の東京大会を翌週に控え、参加者の中にも、僕も含めて、分科会の発表者がいました。今日の会の議論はいい意味で頭の中を整理することができたので、よかったと思います。同時に、全英連の発表へのプレッシャーも高まりましたが。(^_^)v(文責:杉本 薫@東陽中学校)

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