第89回 授業研究会の記録 2002年5月18日(土) 佃中学校


平成14年度の第1回目にあたる第89回授業研究会は、5月18日に開かれました。週5日制の完全実施の中で、初めての土曜日実施でしたが、45名にも及び参加者を得て、有意義な研究会が出来ました。これは、土曜日の実施によって、参加しやすくなった方が増えたのかもしれませんが、またテーマの「絶対評価」が、誰にとっても解決しなければならない重要で緊急の課題としてアピールしたのかもしれません。

今回は、ベネッセ教育研究所の島田研児さんが詳しい記録を取ってくれました。

テーマ「評価の規準と方法」  記録:島田研児(ベネッセ教育研究所)


1) 長先生 講義
 
現状

 評価規準についてだが,現在,文科省評価基準作成委員会(2回目)で評価解説書を作成している。8月ごろに検討が終わり,10月には先生方の手元に届くはずである。
 絶対評価への移行は昭和18年に行われた改革と同じくらい大きな教育改革であるといえる。
 基本的な考え方としては以下の通り。
(旧) 観点別学習状況の評価(絶対評価)⇒ 評定(相対評価)
(新) 観点別学習状況の評価(絶対評価)⇒ 評定(絶対評価)
 旧評価では,新米の先生でもそれなりのテストが作れた(評定に関して,ただ順番をつけることができればよかったので),保護者からの「なぜ評定が4か?」の説明に対して「上から8番目だから4です」という説明が簡単にできた,というメリットがあったが,自分が頑張っても他の子もみんな成績があがれば評価は変わらないというデメリットもあった。
 新評価は,評定が絶対評価になるので,理想を言えば,東京で英語の成績が3だった生徒は沖縄に転校しても3がつくことになる。
 文科省はもともと旧評価の時から,観点別で絶対評価をした後,評定で相対評価をして成績を決めていたのだから,今回の評定の絶対評価導入に関してもそんなに無理はないはずという態度。ただ現実には,観点別の絶対評価を行っている先生は少なく,テストで評定を決めてから観点別評価を決定するのがほとんどだったため今回の混乱が生じている。

 観点ごとの評価規準について
 絶対評価=目標に準拠する評価であって,それぞれでばらばらであってはいけない。
 英語教育の目標は新学習指導要領における目標だと言える。それを整理すると
�� 外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深める
�� 外国語を通じて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る
�� 聞くことや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を養う
                 ↓(言い換えれば)
�� 言語や文化に対する知識・理解
�� コミュニケーションを図ろうとする態度の育成
�� 聞くこと・話すことを中心としたコミュニケーションの運用能力
                 ↓(つまり)
�� コミュニケーションへの関心・意欲・態度
�� 表現の能力
�� 理解の能力
�� 言語や文化についての知識・理解
ということになり,観点別評価の観点とは目標の言い換えであるということになる。

1)コミュニケーションへの関心・意欲・態度
 注意することは「英語を通じて」なので「よく手をあげる」等の態度は評価にあたらない。
 基本は「言語活動への積極的な取り組み」「コミュニケーションを継続する努力」を評価することであり,授業中「メモをとったり」「うなずいたり」でも概ねOKとすればよいと思う。細かく決めずにラフでいいと思う。眠っていたら指導して,それでも眠っていたら×とすればよい。
※ 評価は達成したら○,できなければ×を授業ごとにつけていけばいい。各授業でABCDをつけていくのは実質不可能である。多くの子が○になるかもしれないがそれはそれでいい。

2) 表現の能力・理解の能力
 言語運用の2つの正しさをもとに行う。
 「正確さ(accuracy) 言語規則に照らしたときの正しさ」と「適切さ(appropriateness)実際の言語使用における正しさ(場面に応じて適切な英語を使える)」の2つである。
※ 評価は指導した後で行わなければならない。授業でいきなり評価するわけにはいかない。

3) 言語や文化についての知識・理解
 「言語についての知識・理解」は文字通り「言語についての知識(単語やイデオムの意味等)」のほかに「総合文における it の意味」や「穴埋め補充問題」等の言語運用についての知識も含めるべきだと考える。
 「文化についての知識・理解」は「家庭・社会における日常の生活・風俗・習慣・人々のものの見方/考え方等の違いを知っているレベル」でいいと思う。他の文化と比較する等,さらに難度の高いものを要求する必要は無い。

 評価方法の工夫改善
 工夫改善の方策としては,答申より,ペーパーテスト・観察・面接・質問紙・作品・ノート・レポート等などを使う工夫が示されている。
 今まで定期テストでの評価のウエイトが重かったが,単一の時期や単一の方法によってのみ評価するのではなく,評価の目的に応じて適切な方法を工夫する必要が出てくる。(ここで長先生は英検3級の問題<資料1>を説明される。点数ではなく何問正解したかという評価法にすることを勧められる。が,問題がどの観点に属するかについて先生方で意見が分かれる一面もあった)
 今までのテストでは,単語問題なら1点,読み取りは3点とか難易に合わせて配点を変えていたが,これからは知識をみる問題10問で何問できれば概ね満足というような基準にしていく必要がある。点数をつける必要はない。何問中何問できればよいという形にすればよい。ただし先生によって満足の基準がばらばらであってはいけないので,学校でそろえていく必要(基準;モトジュン)がある。できれば全国でそろえたいが難しいので,まずは同じ地域でそろえていきたい。そうすることによって初めてアカウンタビリティを保護者に果たせるようになる。
 ペーパーテスト作成にあたっても4つの評価の観点を常に念頭におく必要がある。またコミュニケーションの関心・意欲・態度などは,どのように評価していくか授業の中で設定しておかなければならない。録画したり録音したりという工夫が必要。
(長先生の授業:ビデオを取り入れられ,別室にビデオを設置し,出席順にビデオの前で音読をさせる。他の生徒は隣の部屋でその様子をモニタで見たり,音読の練習を行ったりする。終わった生徒はプリントをやってもいい。終わるとすぐ次の生徒というふうに進めていくと1クラス20分程度で終わる。先生はどちらの教室にいてもいい。評価についてはやるだけでも意欲は○ということになる)

まとめ
基準は先生方で話し合い統一する。保護者に説明してあやふやだと裁判になる。2〜3年は移行期ということで文科省や教委のフォローもあるだろうが,5年も過ぎると,裁判で負けると賠償責任も出てくる可能性があり,きっちりと基準を固めていかなければならない。学校で「B」の基準が英語では5割,理科では8割のように教科ごとで違っているのもまずい。統一する必要がある。

質疑
Q. 総合問題だと4つの観点を複合してきく設問もあると思うが,それはどのように評価すればよいのか?
A. まず短文に関するものは知識・理解であると定義づけしてしまう手もある。長文だと観点が複合する可能性があるが,そこで何と何の観点を聞いているのか決定し,評価していくようにすることが大切。


 余談
※ 長先生は,今年度より稲城市の教委のスーパーアドバイザーになられたとのこと。



2)参加された先生のご発表

 杉本先生の自校の評価方法のご発表(佃中)
 学校の課題として以下の3点があがっていた。
�� 基礎力が不十分である
�� 学習習慣がない
�� 指示待ちの態度の生徒が多い。
 これらを絶対評価の導入,つまり「毎日の学習を重視した評価」の導入によって解決しようと考えた。変更する内容については以下に示す。
1. テストは評価項目に沿って行われる
出題の狙いをはっきりと示し,100点満点ではない。
2. テストはもっとも効果的なときに行う(定期考査の廃止)
今年度は全教科一斉ではなくいくつかの教科は定期テストを行う形になった
理由;三年生の学習習慣を壊すことへの不安・部活動の停止には名目がいるなど
よって定期テストを課さない教科もあるが,「集中考査」期間として1週間程度テスト対策に集中する期間を設けることとなった。
3. 通知表の形式を変える
1強か頁に。評価項目を詳しく。
4つの観点項目それぞれに下位項目を設け,その下位項目に関してa b c で評価を行う。下位項目の結果を見て,4つの観点項目をそれぞれ A B C で評価する。4つの観点項目の結果を見て,教科の評定を行う(1〜5)※資料有
      日々の授業での結果をエクセルに入力しておけば,最終的に評定が判定されて出てくるようなシステムにしている。
    問題点;大文字のABCがいくつそろえば5〜1のどの評定になるのかは学校ではまだ決まっていない。会議を持って早急に決める予定。

 議論
▲ (長先生)
100点満点の観念から抜けていない部分がある。下位項目を100点満点で判断している個所がある。もっと簡素化して評価を考えればいいのでは? コミュニケーションについては1回の授業で○×で判断していけばよい。ただし全員を全部見るのは不可能なので,1回の授業で見る20名,次の授業で見る20名などを決め,トータルで各生徒を5回ぐらい見て評価すればよいのではないか

△(杉本先生)
生徒・保護者はまだ評価は100点満点で考える傾向にある。わかりやすいように配慮したため100点満点法を使っている。「授業内での英語の発話」という項目では,生徒に自己申告させて,自分の感想と調整して評価を決めている。生徒と自分の評価が大きく違うのは数名なので,その生徒には時間をかけて評価をしている。また○×で判断していくと,授業ではほとんどの生徒が○になってしまうのではないか?

▲ ○はその評価基準をクリアしたということなのだから,多くの生徒がそうなってもよい。

■(二ノ宮先生 希望が丘中)
  評価はすべての先生が行えるように,簡易なものでなければならないと思う。

△ やはり,100点満点を使うと説明には分かりやすいとはいえ,他のデータとあわせてつかうときに難しい問題もある。(20問で100点満点と,4問で100点満点では1問あたりの重さも違い合わせて200点中90点などとは言えないが,どうしてもそのように生徒は思ってしまう)

□ (池田先生 狛江第一中)
  私は評価項目をもっと絞って,生徒には「ここしか見ない」ということをはっきりさせて評価をしたい。その方が生徒ものびのび学習に取り組める。あと評価法に関しては経験の浅い先生も評価ができるように敷居の低い簡単なものにしたい。

▲ 基本的には評価規準の5割ができればBという判断。これをもとに組み立てるとわかりやすい。

■ ABCDの境目の判断が難しい。ボーダーの部分の判断は各校によって異なるようになるのは仕方がないことなのか?
□ 長先生がおっしゃるようにいちいち細かくABCDをつけずに,○×判断を繰り返し,大きなところで,ABCD判断をすればよいのでは。評価基準は年当初に作れない。定期テストが決まらないと決定できないものだ。

▲ 確かに細かい評価基準を初めに作るのは難しいが,評価規準からどのような基準で評価していくのか予測をしておく必要がある。

■ 予測といっても,生徒の能力が変われば求めるレベルも変わってくるし,授業が予想通り進むかどうかもあるし,なかなか難しいものがある。

〜Time Over〜

 総評 長先生
 今までは「聞く・読む・書く・話す」でテストを考えていたが,これからは観点別で評価しなければならない。これに対応するにはペーパーテストだけでは無理。100点にこだわらない。求める観点の能力のみを評価できるような問題を考えるなどの対策が必要になる。


次回 7月6日(土)午後2時より 佃中にて  (テーマ 今回の続き)

 
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