第79回 授業研究会の記録 2000年9月2日(土) 佃中学校


第79回授業研究会は、9月2日に行われました。夏休み明けで忙しい時期であったことと、強烈な残暑の中での回であったことなどが禍したのか、参加者は16名ほどでした。しかし、集まった先生方の意欲は充分に活発な会を作り上げていました。当初ご都合でどうしてもこの日の参加が難しかった長先生も急きょ駆けつけてくれました。中英研研究部員の公開授業を再検証するというテーマにそって、伊地知義信先生の本年6月の公開授業を素材に研究協議を進めました。




この授業の指導案(アクロバット形式のファイルでダウンロードできます。)

参加者のレポート(佃中学校 君塚佳昭)

今回は、有名な豊島区立西巣鴨中学校の伊地知教諭の研究発表でした。教諭は コンピュータを用いた指導の工夫で有名ですが、今回は特にコンピュータなどではなく、力強いコミュニカティブな活動の展開に主眼を置いたものでした。3年生の授業でしたが、とにかく明るく元気で声が大きい。「(3年生は声が出にくくなることが多いのに)、驚異的な声の大きさだ。」と、研究会にいら した長先生をはじめ、先生方からは驚きの声が聞かれました。1年生のときから、手塩にかけてずっと見てきている生徒さんたちだということで、言語活動に取り組む姿勢がしっかり身についており、教諭の絶大な信頼がビデオからも伝わってきました。

授業は、あいさつのあとすぐDictationに入り、Bingoへと続きます。Dicatationの範囲は、1年生のときの教科書の最初から順に指定され、今回は1年生Lesson9からの1文でした。生徒の反応はたいへん良かったです。授業の最初にDicationを行うのは、生徒が授業の準備によく集中できるようにする効果も考えてとのことだそうです。

続いてsong。今回はMamas&PapasのCalifornia Dreamin'をレーザーディスク・カラオケで歌わせていました。選曲は教諭の好みが生かされているそうですが(!)生徒にはsongはたいへん好評とのことでした。

そしてpair  workと2minutes chatへと続きます。pair  workは前々回に学んだ現在完了の文を使ったもので、互いに競って正解を聞き出す形式で、Bingoのように毎回勝負がつくようになっています。勝てば、アメリカ地図を塗り進めていきます。教諭は、pair  workに用いる文法事項は必ず既習のものを使うように配慮しています。2minute  chatは、会話の切り出しとなる1文を指定して、そこから元気良くパートナーと2分間しゃべっていきます。どの生徒も楽しく、一生懸命しゃべっていましたが、教諭のこの実践はまだとりかかって日が浅いとのことでした。

次にReview readingです。声量、リズム、イントネーションとも抜群でした。音読を重視している教諭の指導の賜でしょう。reading practiceの手順は、Repat after  JT/CD→Paced Redaing→Buzz Reading→Shadowing→Response Recitationとなっていました。新出単語の発音は前回の授業で終わらせているとのことでした。

そしてここで、授業のまとめにならず、次にNew  Materialの導入と言語活動へと進のです。新しい内容はSVOCの文です。少し日本語も交えながら、かの(長先生で)有名な「マトリョーシカ」を用いて、Guess Workから入る実に楽しく分かりやすいCommunicative grammarの説明でした。そしてSVOCを用いたConers activty(ワークシートの人物に関する情報を教室の四隅の英文資料から読みとって、シート完成を目指すもの)で授業の言語活動をしめくくりました。班ごとの活動でしたが、みな良く協力し、そして手際よく読みとっていました。そして最後に本時のまとめと、あいさつでこの盛りだくさんの研究授業が幕を閉じました。

教諭の授業を見ての感想を簡単に述べさせて頂きます。

(1)たいへん盛りだくさんのactivityでした。「1時間でこんなにできるのか。 」と信じられないくらいでした。なぜでしょうか。まず指導内容の精選が徹底できているからということがあげられます。実態に少しでも即していなければ、生徒の反応は重くなってしまうでしょう。また、ムダが少しでもあれば、同じ実践を心がけてもまず時間内に終わらせることは至難の業。教諭のこれまでの膨大実践の積み重ねが、ありとあらゆる効果的な実践を可能にし、そしていとも簡単にスリム化させているのだと思います。つまり、伊地知教諭には、楽しく力のつく「引き出し」がたくさんあるのだと思います。 実際には、1時間の中で行うには今回の授業の6割から7割程度位が妥当なのでは?と思います。改めて教諭の偉大な実践に脱帽です。英語(だけではありませんが)の指導力量向上には、やはり、試行錯誤に基づく豊かな実践量が、絶対に不可欠でありましょう。

(2)生徒がこれだけ元気に活動する理由は何でしょうか。答えは「誘導」のテクニックであると思います。言語活動を充実させる過程においては、生徒にとってさまざまなハードルがありますが、そこまで導いて、そしていかにハードルを跳びやすいものしていくかが、私たち教師が工夫せねばならないことであり、また日夜悩み続けることでもあります。「伊地知教諭のハードルは、実に跳びやすいよう配慮されている」とは、当日の一斉の見解でありました。生徒は楽しく、夢中で英語にチャレンジしていました。 教諭の研究熱心な姿勢、常に斬新な工夫を怠らない情熱、生徒のことを熟知している生徒理解力量、そして生徒を引きつけて離さないすばらしい人間性。これだけの持ち味が、こうした実践を可能にしているのではないでしょうか。教諭の後ろ姿から、我々が勉強することがいっぱいだと思います。

・・・これだけすばらしい授業をなさっているからには、学校はたいへん落ち着いているのかと思っていたら、実は校内には、「生活指導での悩み」はまだまだ山積しているとのお話を伺いました。生活指導にも真っ正面から向かい、授業を通して生徒を引きつけ、伸ばしていくという教諭の実践には、文句なく説得力があります。まさにプロ教師としての誇り、そして教育者としての真の資質を感じます。やはり、多くの優れた実践に出会い、学ぶことは、私たち英語教師に多大な示唆を与えるものだと、深く感じました。
伊地知先生、どうもお疲れさまでした。素晴らしい実践報告を本当に有り難うございました。

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