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 第128回授業研究会

 ビデオによる授業研究 [21]

 2008年11月 8日(土) 午後2時から
  

11月の授業研は学校行事と他の英語関係の研究会が集中する時期に行われるので、参加人数を心配していましたが、この日は約20名の方々が駆けつけてくれました。「ビデオによる授業研究(21)」は、新規採用1年目の田村藤江(新宿区立新宿中学校)先生への大きな応援になったと思います。参加者のみなさん、活発な議論をありがとうございました。

授業は2年生、使用教科書はNEW HORIZON、Unit 5で、主な言語材料は、従属接続詞(if、thatなど)の表現です。ビデオで提供された授業は、研究会前日に撮影されたものです。当日の議論のいくつかを紹介します。

授業は少人数の展開形式なので、生徒は20名ほど(男女ほぼ半々)です。まず、田村先生の元気のいいはっきりした英語のあいさつから始まります。その後の説明や指示も大半は英語で進められており、この「英語の授業を英語で行う」という、指導姿勢はとても立派です。生徒の反応も、元気のいいものでした。ただし、一方では、その元気の良さが授業の展開から逸脱してしまう場面もあり、まさに先生の授業の進行とその展開に集中しきれない生徒との格闘という一面もあります。その中で終始一貫、自分の授業を進める意志の強さと粘り強さには研究会の参加者も感服していました。この研究会は英語という教科の指導を切り口にしていますが、授業の改善は生徒指導の改善でもあり、授業こそが最大の生徒指導の場面でもあるという認識をしっかり持ち続ける強さが我々には必要です。田村先生を見習いたいと思います。

授業改善の視点としては、次のような議論が交わされました。

・日付や曜日の確認にも、 きちんと時間をかけて音声との結びつきを確認しながら板書する指導はとても重要だ。Novemberひとことでも大切な教材になる。

・Dictationで解答の英文に文法的な復習の説明が加えられていたが、Warm upという設定からもねらいをはっきりさせて指導内容をしぼらないと、学習者の意識も中断して授業の効率も下がる。本時の展開に直接関係があることなら、Warm upではなく、新教材の導入の直前などの一に設定するべきだろう。その意図がなければ、この時間に特に取り上げる必要はない。Warm upとしては、出題する問題にも配慮して、単に文型として重要であるというだけではない選択基準があるべきだ。

・Dictationそのものは非常に難しい学習方法なので、やり方によってはハードルが高くなりすぎる。Warm upとしては、大半の生徒にとって合格できるものがよいのでは。直前の音読の回数や黙読時間の設置、出題範囲をほとんどの生徒にとって楽に音読できるところにおくなど工夫の余地はあるだろう。

・ここで行っているDictationはShadowingの基本的な練習でもある。音読のスピードはnaturalな速さを目指すべきだ。そのためにも、充分に音読できるページを使いたい。

・Bingoは5分で終わるべき。読むスピード、リズムの取り方などの工夫は、あまり時間をかけずにできるという前提で考えたい。

・songではStand By Meを聞かせていた。興味のある生徒も多いようなので、継続していくとよいだろう。ただ、やはり時間をかけすぎないようにしないと、後の展開に影響が出てしまう。

・Warm upのプログラムが多いので、授業全体の構成のバランスを考えると取捨選択も検討すべきか。また、指導方法のテクニックとして、次の展開を念頭においた、早めの指示や目立たない布石の配置を考えることも重要か。これは、授業全体の進行上も必要な配慮になるはずだ。

・slow learnerの学習状況が心配で、どうしても一つずつ確認してから進行していく。これも結局は授業展開を妨げる一因か。現実にはスピードを上げても、先生の心配をよそにある程度ついてこられる力を持った生徒もいるはずなので、よく観察してスピードを設定していきたい。いろいろな進行方法を試すべきだ。

・進境時の導入時に、自分で撮影してきた駅前の自転車置き場の写真を使っているのは非常に面白い。生徒がすぐに気が付くし、興味をよく惹きつけていた。

・教科書のユニットの新文型の導入(ここでは、ifを使った表現)と、題材や話題そのものの導入が、一緒に行われてしまった。内容の分量からみても多すぎたか。分かりやすさの観点からも、重点の置き方を工夫しておいた方がいいのではないか。ifを使った表現などは、この時点で軽く扱ったとしても、この先少しずつ指導の機会を継続させることは可能だろう。題材背景も、登場人物の紹介から場面の説明、展開まではかなりの集中力を要求してしまう。

・全体的に生徒の発話機会を増やす工夫が欲しい。

・様々な理由から特別な支援が必要な生徒は、最近はどのクラスにもいる。参加者からはそれぞれの経験からのアドバイスが寄せられた。当然のことながら決定的な方法などなく、状況に応じていろいろな手を打ち続けていくだけだ。それだけに、具体的な対応事例は大きな手助けになる。



いつもながら、この会で授業を発表してくれる先生方の努力にも、参加者の熱心な議論にも頭が下がります。また最近は、学生をはじめ教職を目指す方たちの参加も増えています。お互いにそれぞれの熱意を交換する場としてもこの会は貴重な存在になりつつあります。

発表者も参加者も、そして会の運営者も、それぞれが何かの形で議論の中に自分を映す鏡を見つけ出しています。そして、そこに映される自分の姿と、求める理想とのギャップの狭間でもがきつつ、ふと周囲を見ると一緒に悩んでいる仲間の存在が背中を押してくれている。それは、意欲と志のなす技で、経験年数や実績とは全く無関係です。毎日の指導に疲れを感じたら、「英語授業研究会」は試す価値がありそうです。(文責:杉本@両国高校附属中学校)

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