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第125回授業研究会

2008年 5月24日(土) 午後2時から

会場は、東京都立両国高等学校附属中学校

テーマ 「授業を見直そう」 ビデオによる授業研究(19)

都立両国高等学校附属中学校を会場としての授業研究会再出発です。時期的には、多くの学校で運動会が予定されていたり、他の研究会と重なったりとあまりよい条件ではありませんでしたが、25名の熱心な参加者を得て、充実した会になりました。

充実した会になった最大の要因は、授業を発表してくれたお二人の先生です。「教職2年目の再スタート」というタイトルを付けましたが、二人とも2年生を担当、紹介されたビデオもつい最近の撮影ですから、ほとんど同じところを扱っているという興味深い状況での研究会になりました。

ただ、研究会の時間は限られているので、2つの授業の前半を見るのが精一杯になってしまいました。この点は今後の会の進め方の中で、補っていきたいと思っています。

では、いつものように研究会での議論の一部を紹介します。

・重本博美先生(江東区立大島西中学校)、青柳広夏先生(江東区立深川第2中学校)ともに、非常に意欲的で、生徒との信頼関係や基本的な授業の約束事が意識されている授業です。2年目の指導の成果であると言えそうです。ただ、「慣れ」は往々にして「緊張感の低下」に結びつくので、いろいろなアプローチを導入していくことも必要だと思いました。今度の研究会に臨む授業提供者としての問題意識もその点に対する意欲的な取り組みの1つと言えます。こういった姿勢を持つことは極めて重要に思います。

・授業の基本的なパターンを持っていることは効果的です。重本先生のmini-testからBingoへの流れ、青柳先生のDictation testからBingoへの流れは共に安定感があります。生徒が何を要求されているかよく分かっているからで、その後に続く授業の展開を支えているだけでなく、長いスパンで見ていくと学習の姿勢や方法をじっくりと指導していることにもなります。

・二人の授業で対照的であったことは、そのまま我々のアプローチ選択の悩みでもありました。

・Bingo は重本先生は、最初に日本語の意味を言ってから、単語を2回発音するやり方、青柳先生は、最初にSpell outしてから単語を発音するというやり方。それぞれにねらいがあってのことであれば、その視点からの見直しをしていくことで、時間をかければ効果は生まれてくるはずです。
一般的には、英語の音声に集中させることが大きなねらいなので、先に語の音を与える方法が多いのですが、これも試しながら見極めていって欲しいところです。

・学習者の個人差は授業でも問題になる部分ですが、特に書く作業が入るとこれが顕著になります。遅い生徒に合わせつつ、速い生徒への対策を打つことも必要です。

・全体に読ませたり発話させる場面では、先生がモデルを示してRepeatさせるやり方が多かった。ただ、個々の生徒の発話にまで進まないと、最終的に声は小さくなってしまう。段階を経て、無理なく練習させたい。

・共に未来形のwillを扱っていました。重本先生は生徒に速くたくさん発話させることを念頭に置いた活動、青柳先生は復習から始めて意味をしっかり説明しながらの口頭練習と対照的でした。共にゲーム性を持たせた点は工夫されています。ただし、単に文型の口頭練習という段階で終わってしまっています。言葉の意味を考えさせて、少しでも自分の気持ちや意志を伝える経験、言葉としての英語を通じての情報のやりとり、という視点からのアプローチがないと「言語活動」には至らない。「口頭練習」の段階でしかない。という点を再考する必要があるように思います。

・この点については教材の研究が不可欠。willとbe going toの使い分けなども非常に難しいところで、身近で分かりやすい事例や展開が欲しいところです。会場からの事例としては、英字新聞でのテレビ番組表や天気予報を使った「実際に使われている英語」によるアプローチの話がありました。

・日本語の説明が多くなりすぎている点も指摘されました。二人とも英語で授業は始まり、普段行っている活動についてはほぼ英語で進められています。しかし、日本語はすぐに出てしまいがちです。青柳先生のI willを使ったゲームも説明から終了まで指示は日本語になってしまいました。効果的な日本語の説明は重要ですが、「英語で理解させる」という視点は心しておきたいところです。言いかえると、例えばゲームの方法などは「英語で理解できる」ところまで普段の授業の中で布石を打っておく、繰り返しておくという準備がいるということです。また、往々にして、「分かっているか心配になって日本語を使ってしまう」ということがありますが、ほとんどの場合「日本語で説明する方が難しい」ことが多く、初めから「分からせる」ことに神経が集中してしまうケースが多いようです。分からないことは話せない問のは錯覚で、「使える」ことと「分かる」ことの違いを、指導者は見極めなければなりませんね。「使える」ようになったところで、初めて文法や語法の説明を加えて、「分かる」ようになる指導を考えて下さい。

いろいろな議論が続きましたが、お二人の授業者がさらに期待していた「音読指導」の部分は、宿題になってしまいました。「日を改めて」ということにしておきます。誰もが苦労する部分ですから、議論する機会は必ずあるはずです。進行と準備の不手際ですみませんでした。ビデオによる授業研究も19回目、この「若手の先生方による授業研究」で授業を公開してくれた方たちも延べ20人になります。新しい取り組み方も検討しています。どうぞ、ご意見やご希望をお寄せ下さい。


重本博美先生、青柳広夏先生、お二人のはつらつとした授業の様子を見ていると、いかに自分がくたびれてきたか歴然とします。経験でカバーしているとはいうものの、やはり教師の前向きな姿勢が基本であるということを、思い知らされました。18年前の授業研究会発足時と同じ「両国」という名前のもとで再出発の第126回でしたが、僕自身も「原点」を見直すことができました。それにしても、「人生は、一歩進んで2歩さがる」ということは次に頑張って進んでやっと原点回帰なんですね。さがったところで終わらないようにしなければ(^-^) 文責:杉本 薫@両国附属中学校


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