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第122回授業研究会

2007年11月17日(土) 午後2時から

会場は、東陽中学校

テーマ 「授業を見直そう」 ビデオによる授業研究(16)

江東区立南砂中学校の目黒雄平先生を迎えての第122回英語授業研究会の報告です。参加者11名。

自己紹介にあるように、目黒先生は教職2年目、このところ若手の授業研究を進めている授業研でも本当に(!?)若手の部類に入ります。しかし、ビデオで見る限り、授業の語り口は落ち着いて安定感があり、生徒の自然な発話を引き出しているところは、むしろ経験豊かな雰囲気、風格さえ感じさせます。まず、教師としてのセンスの高さを感じました。授業そのものも、さらに指導案もすべて英語で詳しく準備されており、単元の進め方と1時間の授業の位置づけもかなり検討されていることなども真摯な研究姿勢と言えます。

目黒先生が考えている授業のねらいはご自身の言葉で次の2点に集約されます。
@ 『実際に使える英語を身に付けさせたいという事を念頭に授業を進めていますが、なかなか効果的な方策が思いつかず苦労しております。また、生徒の注意を如何に授業に引き付けられるか、動機付けをどう行うかなどを模索しております。』
A『授業では、口頭での英語運用をメインに支援したいと思っておりますが、文字を書くことが苦手な学習者も点在しており、書くことへの支援の必要性も強く感じております。今回の授業では、初めての言語項目ということもあり、その基本的な形と概念が掴めれば良いと考えました。』

協議会で議論された内容をいくつか紹介します。

授業は2年生、比較級の導入を扱いました。授業の構成として、特徴的なのは、導入時の2時間を文型練習にあてて、教科書を3時間目から使う計画です。この日の授業は、自作の教材を使ったIntroduction、Listening Quiz、Drilling、Speaking Practice、Reading and Writing Practiceで構成されています。一つ一つはそれぞれのねらいに沿って工夫された教材で、それぞれに生徒を飽きさせず興味を引きつける効果があったと思います。しかし、段階的で分かりやすい指導という視点から考えると、話題の一貫性、使用語いの多さとそのリサイクル方法、学習する表現の多様さなどは検討の余地があったように思います。

比較級の導入については、話題と語いの選び方についても話が盛り上がりました。目黒先生の授業では、3つの国の大きさ、気候を日本と比べる、有名人と目黒先生の身長や体重の比較などの話題が使われていました。参加者からは、年齢を比べる、背の高さを比べる、地図の切り抜きを使った県の大きさや形などのやりかたなども紹介されました。中には、足の大きさを比べ合う(!?)というすごい例もありました。とにかく、身近なところから始めることと、既習の語いで無理なく導入できることが効果的であるという結論でした。

長先生から、大学生の研究から、最近の教科書が年齢や体の特徴、性別などの要素を避けるようになってきたという視点を紹介されました。比較級に限らず、職業や能力などの話題、語いなどを考えると、人権についての意識は、「教室の中の教師」は意外に低いかも知れないという指摘にはちょっとドキッとさせられました。

授業のねらいである「実際に使える英語を身につける・口頭での英語運用」ということは、もうすこしコミュニケーションを意識した活動があってもよかったように思います。文型練習が中心であるため、口頭練習はあるものの「理解」中心で、生徒が英語を使う場面が少なかったようです。

さらに長先生から、このところ江東区の授業を続けて見ているのでここで使われているColunbus 21という教科書の特長をもう少し生かすことも考える必要があるという指摘を受けました。今回の比較級も、 A is --er than B という文型はこのユニットの本文には出てきません。出てくるのは、A is ---er と言い切る表現で、than B は文脈から判断させるようになっています。僕も含めて江東区の英語教員は使用教科書の研究を組織だって進める必要がありますね。

最後のまとめに使うワークシートはやや難しかったようです。テキストのみを読み進むのはかなり難しい作業で、教材作成時の留意点として、使用語いの選択とvisualやaudioの助けがどのくらい必要か、工夫の余地がありますね。

全体として、目黒先生が自分の意図している授業をきちんと準備して実践していることは素晴らしいと思います。課題は、授業構成の見直しとしてwarm upを授業のroutineとして設定すること、生徒の目線に合わせて身近な話題を活用すること、学習にさらに小さなステップを用意して分かりやすくすること、そして最も基本的な教材である教科書の特長を生かしながら、最大限に利用することなどがあげられます。

…とまとめてみると、何のことはない、我々全員に共通して必要なことばかりでした。目黒先生へのエールは、仲間の英語教師への励ましでもあります。やっぱりみんなで叱咤激励し合う機会は大切ですね。授業研の存在意義を再発見できました。(文責:杉本 薫@東陽中学校)

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