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第118回授業研究会

2007年3月10日(土) 午後2時から

会場は、東陽中学校

テーマ 「授業を見直そう」 ビデオによる授業研究(12)

              

前回は武蔵野大学を借りての研究会でした。久しぶりに東陽中学校で、この研究会の発足当時からの伝統であるビデオによる授業研究を行いました。参加は10名。授業者は伊地知可奈先生(練馬区立八坂中学校)です。

授業は2年生、教科書はNew Horizonで、単元は「不定詞」、ビデオの収録は昨年6月です。

まず、授業の展開するスピードにビックリしました。指導案を見ると、活動が多彩で、時間内に収まるのか心配になるほどでしたが、見事に指導しきっています。そして、生徒を自在に動かしていること、生徒の反応が非常に良く、すぐに手が挙がって「英語で答えたい」という意欲が画面の中の後ろ姿ににじみ出ていること、など指導の確かさを充分に感じさせる雰囲気でした。長先生の言葉を借りると、「先生が意図した授業ができている」ということです。

授業は前半がほぼ毎時間行っているroutineとして、次の6種類の活動。Bingo / Song / Word Tesst / Dictation / Listening Practice / Chat。もちろん、最初にgreetingがあります。ビデオの授業ではやりとりの少ない簡単なものでしたが、最近は個々の生徒とのやりとりを増やしているそうです。これも含めると7種類になります。

当然これらの大量の学習の位置づけが大切になります。生徒は、どんどん勢いに乗ってこなしていくので、そう意識することがないかも知れませんが、こうやって授業をゆっくり見ていくと一つ一つの活動の方向性やねらいが、長いスパンの中では重要であることがよく分かります。単に英語に接近する楽しい雰囲気作りや、何となく活発に英語を使っているという漠然とした効果だけではないはずです。研究会でまず指摘されたのはこの点でした。指導案にも具体的な評価計画が載っていないので、一見しただけでは「何をねらった」学習の「どの段階」なのかが分かりません。一つ一つの活動そのものはそれぞれに重要ですが、配置と手順の整理、言いかえると指導と評価の計画に沿った位置づけが、指導者にとって重要な課題です。

長先生からは、Dictation Test / Listening Practiceは時間をかけて指導することで効果が見えるものなのでぜひ継続してほしい。逆にWord Testは他の形でカバーできるかも知れない。との指摘がありました。

さて、この中で大きな話題になったのが、Chatという活動です。1分間ペアで会話を続ける活動で、生徒はよく慣れていて楽しみながら立ち上がって話し続けていました。

そもそも1分間話すということは簡単なことではないはずです。それが次の段階で、何かの学習形態に結びついていって、どのような展開をしていくのか。あるいは、この1分間を成立させるための練習が、手順を追って準備されなければいけないのか。

また、「話す」ことと「書く」ことの手順についても意見が出ました。先に話して、その後書く。というやり方は難しくないか。「先に書いて、それを元に話す」ほうが生徒には優しいはずで、その段階の指導との関連はどうなっているか。Chatができるということを、中学2年生のこの時期に要求してしまっていいか。等など。

じつはこのChatという学習形態は、伊地知先生の授業ではひとつの核になっています。後半の新教材の学習でも再度登場します。「夏休みにどこへ行って、何をするつもりか」を話題に1分間話す練習が最後の段階で盛り込まれています。後日それを発表する時間も用意されています。それだけに、その手順を明確にすることは、指導者にとっても重要です。長先生は、「small stepをはっきりさせる」という表現をされていました。評価と指導の計画というのはまさにそのことです。このChatが「いつどの段階で」「どのように」評価されるのかということは、「今、この段階を」「このように」指導しておく必要があるという手順になるわけです。「何を」「いつ」「どのような手順で」指導していくかは、思いつきでは対処できない視点です。指導者がしっかり押さえておかないといけないのはもちろん、生徒が理解できればさらに指導の効果は高まるはずです。

教科書を開いての後半でも、この授業のスピードは落ちません。前時の復習でいきなりドラえもんの登場人物が登場したときは、見ている方はビックリ。生徒は当然の展開で、充分に期待していたのか、また手がよく挙がります。学校の先生方がポーズを付けて写真で登場する頃には生徒の興奮も最高潮。校長先生も浮き輪を付けて授業参加でした。指導する側のこういった雰囲気は生徒に悪い影響を与えるはずはありませんね。伊地知先生の人柄と指導力のなせる技です。そう、これはかなり高度な指導技術です。見習わなければ。


伊地知先生の授業では、実に多くのことが発信されていました。それだけ研究会の議論も活発になりました。そのスピード感と相まって、まさに目の覚めるような授業だったと思います。実は、伊地知可奈先生は新採の時からこの授業研究会に参加されていました。当時は、両国中学校で開催されていました。ご主人もこの会の最初期からのメンバーです。そのわずか10年ほど後になって、今日のようなすばらしい授業を見せてもらえたことは、とても嬉しいことです。118回続けた意味があったのかなと、感慨に堪えません。年をとるのも悪いことばかりではなさそうです。(^_^)v (文責:杉本 薫@東陽中学校)

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